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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)1206号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告代理人弁護士久保田美英の上告理由は添附の別紙記載のとおりである。

上告理由第一について。

論旨は要するに、自作農創設特別措置法施行規則一条の二による農林大臣の承認は行政処分であると主張するに帰する。しかし、右の承認は、農林大臣の都道府県知事に対する指揮権に基く行為であつて、上告人等に対する行為ではなく、また、上告人等の権利義務に直接関係のある行為ではない。原判決が「行政訴訟の不服の対象となるものではない」と判示したのは正当であつて、論旨は採用することができない。

同第二点について。

論旨は、原判決は本件不承認行為の効力について審理をしない違法があるというのであるが、前述のように承認、不承認が行政処分ではなく、その取消または効無確認を求める訴が不適法である以上、かかる点について判断を加える必要はないのであつて、論旨は理由がない。

同第三点について。

論旨は、前記自作農創設特別措置法施行規則一条の二は、法律によつて定められた都道府県知事の権限を、省令をもつて制限するものであり憲法に反すると主張するのである。

しかし、都道府県知事が自作農創設特別措置法に基いて行う行為は、いわゆる国の機関委任事務に属し(地方自治法一四八条二項、別表第三参照)、この種の事務については、主務大臣は地方公共団体の長を指揮監督できるのであつて(国家行政組織法一五条、地方自治法一五〇条参照)、前記規則一条の二は、農林大臣の右の指揮監督権に基くものと解せられるから、所論のように省令をもつて法律を変更するものではない。所論違憲の主張は、農林大臣の右の指揮権のないことを前提とするのであるから、その前提においてすでに誤つており、到底これを採用することができない。

同第四点について。

論旨は原判決が上告人の「本件買収除外区域指定を承認すべし」との請求を不適法と判示したことを非難するのであるが、承認が行政機関相互間の行為であり、上告人等の権利義務と直接関係のない行為である以上、原判決は結局正当であつて論旨は理由がない。

以上説明のとおり論旨はすべて理由がないから本件上告はこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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